ProductsNov 06 2020

オリエンタルな美とモード・センスで
ファッション業界からも注目されるモダンドール。

mv_1040_579.jpg

類型を破る作風や技巧派作家とのコラボレーション作品で多くのファンの心をときめかせるドールデザイナー荒木啓子さん。モードセンスを取り入れた独自の世界観を持つ佳麗なモダンドールは、オリエンタルな顔立ちとスラリと伸びた手足が特徴。荒木さんが生み出す作品は、2010年にアーティスティック・ディレクターのアルベール・エルバス氏のコレクションに加わり、アパレルブランドのショールームでの永久展示、百貨店やホテルのディスプレイなど、国内外のファッション業界からも注目を集めています。


平面デザインから立体アートへ。

未経験、独学でスタートした新たな表現。

人形にもオーラがあるんだ。これが、作品を間近で拝見して直感的に頭に浮かんだ言葉です。今まで触れてきた"人形"とは一線を画した高いアート性。小物のディテールまでも美麗で、ずっと見ていたくなる陶酔感が満ちてきます。きっとすごい方に師事されたに違いないと、ドールデザイナーになられた経緯をうかがうと、

「独学です。クリエイター人生のなかで本当に作りたいものは何かと自問したときに、立体造形で自分が美しいと感じるものや可愛いと思うものを作りたい想いが芽生えました」とのこと。インスピレーションをご自身の手によって感覚的に可視化していくクリエイターとして独自のアプローチと製作への熱量こそが荒木さんの作品が放つオーラの正体だと感じました。


どこかで見たようなものは作りたくない。

誰も見たことがない作品を生み出したい。

Anniversary doll 髮・粋 1500pixel.jpg

ドレッシーなドールに誕生石をつけたバースデー・ドールや、ウェディングブランドとタイアップしたウェディング・ドール、世界に一点だけのプレミアム・ドールなどの『アニバーサリー・ドール』。それ以外にも、ガラスや漆、陶芸などの工芸作家とコラボレーションし、異素材の組み合わせで独創性のあるアートへと昇華させた作品も発表されています。ひとことで表現するなら"今までに見たことがない人形作品"。荒木作品の特徴であるボディバランスや顔立ち、体をくりぬいた作風もインパクトとオリジナリティが光ります。

「どこかで見たようなものは作りたくなかったんです。誰も見たことがない、印象に残る作品を生み出したかった。ボディをくり抜いたのは、自立した女性の軽やかさや内面の美しさの表現でもあります」と、話される荒木さんの想いがドールたちの凛とした表情に宿っています。


神は細部に宿る。

女性らしさを表現するために最もこだわるパーツは?

3_1040_700.jpg

視覚的には女性らしい曲線の雰囲気を感じていましたが、よくみるとボディラインは直線的。なぜこんなにも柔和さや色気を感じるのかと考えていると「手の表情にこだわっています」と一言。確かにどれも手の表情がさまざまです。指先までたおやかで優美な手は、温かみのあるマットな質感も相まって今にも動き出しそう。

「手はその人の性格や所作の美しさが表れる部分なので顔よりも神経を使いますね。1ミリの差でも印象が変わるため、片手の製作に3日かけることもあるんですよ」

実際、手に魅力を感じると言うファンも多く、最もこだわられているパーツだそうです。


ショールームへの訪問が、

現在の作風を確立するきっかけに。

4_1040_598.jpg

リボンを使用したドールをたくさん作られている荒木さんですが、以前は紙でドレスを作られていました。

「紙は一度折るとシワができてしまうため貼り付け直すこともしばしばありました。その点リボンは格段に扱いやすく、ドレープも理想の形になります。」

リボンを使用することにきっかけは、2012年に表参道ヒルズのギャラリーで行っていた展覧会でのSHINDOスタッフとの出会いだと荒木さんは語られます。荒木さんの作品に魅了され、可能性を感じたSHINDOスタッフが「S.I.C.のリボンでドールを作りませんか?」と提案。原宿のS.I.C.ショールームへお誘いしました。


表現の幅が広がり、作品クオリティが向上。

S.I.C.との出会いが分岐点に。

「お話しをいただき、直感的におもしろそうだなと感じました。ショールームでいろいろなリボンに触れていくうちに、思いもしなかった色同士の組み合わせが素敵なことや、レイヤーで生まれる透過の美しさの発見があり、創作意欲がムクムクと湧いてきました」

ショールームが新しい創作への源泉の場になれたとのこと、大変うれしいです。

「厚みやハリを感じながらイメージを膨らませられたのも良かった。『S.I.C.』はカットした部分がほつれないので切りっぱなしで使えて、バッグやシューズなどの小物も作りやすいです」

紙ではなくリボンを使用することで全体的に高級感ある仕上がりになり、作品としてもクラスアップしたと喜ばれていました。


荒木啓子さんのクリエイティブによって感じた、

リボンがアートに寄与できる可能性。

S.I.C.』を使用して製作された作品をご紹介していただきました。

5_1040_631.jpg

「トルコをイメージしたコスチュームはオーガンジーの重なりで幻想的な色。ブルーのオーガンジーリボンで作った柔らかな曲線を描く軽やかなバルーンスカートがポイントです」(2013年:原宿ショールームにて展示)

6_1040_631.jpg

「流れるようにまとわせたリボンは見る角度で色みが変わる不思議で魅力的な色。繊細な光沢がゴージャス感を放ち、ドレープの美しさが際立ちました」(2019年原宿ショールームにて展示)

7_1040_740.jpg

「空気をはらんだような大小の球体装飾をリボンで作り施しました。微妙な白色の差異や透け感、オーガンジーの重なりで生まれる優しい濃淡がお気に入りです」(2020年ピアスギャラリーにて展示)

8_1040_631.jpg

「光を取り込んだようなテクスチャーのシルクサテンリボンを髪の毛に見立てて使用しました。つややかで美しい髪はジュエリーを美しく引き立たせています」

2021年1月に、大阪のギャラリー白にて個展開催を予定されている荒木さん。今後の製作活動についてうかがうと、「近年は大きめの作品が続いたので、しばらくはアニバーサリー・ドールの製作を中心に考えています。その時はまたSHINDOさんのリボンを使わせていただきたいですね」と優しく微笑んでくださいました。

荒木 啓子(あらき けいこ)
■荒木 啓子(あらき けいこ)
イラストレーション制作会社で9年間勤務したのち、独立。平面での表現を追求していたイラストレーターから一転、立体造形の分野へ。クリエイター荒木啓子の第2フェーズとしてドールデザイナーとして活動。独自の世界観をまとった魅力的なドールたちは国内外で見る人を魅了し、個展以外にも京王百貨店・新宿店はじめ各地の百貨店など商業ディスプレイでも高い評価を得ている。

TOPCategory Archive(カテゴリ一覧)Productsオリエンタルな美とモード・センスで
ファッション業界からも注目されるモダンドール。