ProductsAug 21 2020

創業100余年の京都紋付、 伝統産業からサスティナブル企業へ

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「黒紋付」は黒一色の地色に白い五つ紋が印象的な、日本の最高級の正装。その黒紋付を染め続けて100余年の「京都紋付」は、新撰組発祥の地としても名高い京都・壬生(みぶ)の地で今も黒にこだわり抜く染物屋です。SHINDOオリジナルブランド『S.I.C.』のリボンやテープを漆黒に染めたアップサイクル商品でもご協力いただいています。唯一無二の京黒紋付染めの技術を駆使し、伝統産業から現代のサスティナブル企業へと変貌を遂げた京都紋付の取り組みをレポートします。


黒にこだわり続けて100年以上。

豊かな地下水を利用した京黒紋染め。 

黒紋付は17世紀ごろに武士が礼服として着用したことから始まり、一般には明治以降に広まったとされています。黒紋付は黒ければ黒いほど格式が高いといわれ、1915年創業の京都紋付は染物屋としての歴史の中で『深い黒』を追求し続けてきました。

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「世界的に黒染め専業でやっているのは、紋付の業界だけ、そして京都だけなので非常に珍しいんです。うちは100年以上黒染めをやっているから、より黒く染める技術を確立しています。黒に関してはどこにも負けませんよ」と語るのは、株式会社 京都紋付の荒川社長。

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「紋付を着る時、白い襦袢を着て袴を着け、その上に紋付を着ます。白い襦袢を汚しては大変です。それに黒紋付は柄がない商品ですので、美しい黒さを出せるかが勝負。『黒を極める・色落ちしない・色ムラがない』この3つを追求しているのが我々です」

京都の壬生(みぶ)地区は、かつて水が生まれると書いて「水生(みぶ)」と呼ばれていたほど良質な地下水が湧く場所です。この水を使った染物は、非常に発色がよいことから染物屋が集まる地域でもあります。京都紋付は壬生の豊かな地下水を利用しながら、現在も高品質な黒を生み出す京黒紋染めの老舗です。


黒をとことん追求して到達した「深黒加工」は、

着心地がソフトで、環境にも優しくエコ。

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黒を追求していく上で京都紋付がたどり着いたのが、「深黒(シンクロ)加工」です。光を吸収する薬品で生地を加工することで、漆のように艶やかで深みのある黒に染め上げる画期的な方法です。手法としては、まずベースとなる黒染めを反応染料で行います。ベースの黒さが深黒加工に影響するため、非常に重要です。この反応染料の開発にも年月を要しました。反応染色が終わると一点一点、天日干しを行います。乾燥機は生地を傷める恐れがあるので使用しません。そして深黒加工の液剤で生地に加工を行い、再度天日干しを行います。そうすることで、黒紋付と同様の黒を表現します。

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深黒加工には、たくさんのメリットがあります。まず、他の追随を許さないほどの深みのある黒です。無彩色でありながら鮮やかにも感じられる黒は、まさに「漆黒」。そして、染料と繊維の分子が結合することで、色落ちの心配がないこと。染めを重ねて黒さを増すわけではなく、光を吸収することで黒さを増しています。また、高い堅牢度を保ちながら仕上がりがソフト。副産物として、生地に撥水性が出るのでお茶などをこぼしても簡単に拭き取れることが挙げられます。またもう一つの大きなメリットとして、赤ちゃんが口に入れても安全な染料を使っているため安心して着用でき、地球環境にとっても優しいという点があります。

「深黒加工のための染色機械はオリジナルです。ビーカーでうまくいっても、ラインに流すと失敗ばかりでした。今のように安定した高品質の加工が完成するには5年はかかりました。」

深黒加工は従来の染色方法よりコストがかかりますが、あくまで独自の深黒加工にこだわります。「黒を極め、安心して着用いただき、社会に貢献できること」を目標に掲げた深黒加工は、美しい黒を極めつつ環境に配慮した、エコな伝統技術でもあるのです。

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黒紋付から洋服へ。

「K」(旧KUROFINE)として新たに歴史のスタート

もともと黒紋付のために考案された深黒加工ですが、現在は洋服の染色が増えていると聞きます。深黒加工の美しさに魅了された顧客から「洋服も染めてほしい」という声を聞き、アイデアマンの荒川社長はひらめきました。

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「これはチャンスかもしれないと。洋服に深黒加工する新業態KUROFINE(クロフィネ)として2013年にホームページを立ち上げ、一般のお客様からの依頼を受けることにしたんです」

ちょうどその頃、京都紋付は世界自然保護基金(WWF)の「PANDA BLACK REWEAR PROJECT」への参加が決定。古くなった洋服を深黒加工でリウェアし、新たな命を吹き込むこのプロジェクトに3年間携わったことが、「KUROFINE・深黒加工」の本格始動へと繋がりました。

「今は断然、紋付より洋服を深黒加工する方が多いです。かといって紋付を染めることをやめることはありません。この技術が途絶えてしまったら、日本の歌舞伎役者、芸妓さんなどの伝統芸能の装束が作れなくなってしまう。だから絶やすわけにはいかないんです。洋服を染めるのは、伝統技術を残すためでもあるんです」

そしてまたこの9月6日にKUROFINEは新しいブランド「K」に進化します。今コロナ禍で困っておられるすべての企業を助けるスキームとしてスタートします。

次代に技術を継承していくためにも、環境に柔軟に対応して変化していかなければならないと語ります。


深黒加工で広がる新しい可能性。

洋服は、もっと長く楽しめる。

深黒加工を施した洋服はシミが帳消しされ、まるで新品のよう。自分の服を深黒加工したお客様からは「お気に入りの服がきれいになってうれしい」と好評です。近年ファストファッションの流行などの影響で、廃棄されるファッションの量は増加傾向です。しかし、汚れて着られなくなった服を深黒加工で蘇らせれば、長く着ることができ、地球環境にとってもプラスになります。

京都紋付の深黒加工は、地球環境への意識が高まるアパレル市場に「アップサイクル(生まれ変わらせ活用する)」という可能性をもたらしました。古着ショップ「セカンドストリート」やスピンズが運営する「」では、汚れが目立ち売り物になりにくかったヴィンテージウェアを深黒加工することでまるで新品のようにリウェアし、付加価値を加えた商品として販売しています。本来、深黒加工は、綿、麻、ウールなどの天然繊維の染めを得意とし、化学繊維部分は色が入りにくいのですが、それを逆手に取り、化学繊維の糸のステッチをアクセントにした面白い表現ができるのも良さの一つ。プリント部分や化学繊維を使った部分は染め残ったり、シワ加工が施されたものはムラが出たりと豊かな表情に仕上がり、商品の新たな魅力になっています。

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▲(左)深黒加工前 /(右)深黒加工後

いまでは最初から染め替えすることを前提とした「2way商品」の企画も進行。商品タグに印刷されたQRコードをスマホで読み込むと、深黒加工後の画像が現れ、染め替え後をイメージしてもらえます。汚れたり、デザインに飽きたりしても、黒染めすれば新しい洋服にチェンジ。新しいマーケットの広がりを促進し、一着を長く着る大切さを訴えることができます。

京都紋付のエコロジカルな取り組みはテレビや新聞だけでなく、高校の教科書やNYタイムズなどのメディアで取り上げられるなど各方面でも話題になっています。今後もアパレル業界が直面するSDGs活動のヒントになっていくのではないでしょうか。


これからの地球環境、アパレルの未来のために、

「京都紋付×SHINDO」新たな商品作りへ。

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▲(左)深黒加工前 /(右)深黒加工後

SDGsの取り組みを進めるSHINDOは、京都紋付の企業理念や活動に強く共感しました。そこで『S.I.C.』の廃番予定品やキズなどの生産不良品を深黒加工で蘇らせる新たな試みを始めました。余った商品を廃棄せず、新商品として世に送り出す。これからの地球環境のために希望の持てるシステムです。

「SDGsにどう貢献したらいいか苦労している企業が多い中で、SHINDOさんは世の中の動きに沿った活動をされてますね。京都紋付も同じ志があるので、非常に共感できる部分があります」

服飾副資材のような小さなパーツに深黒加工を施すことは京都紋付でも初の試みだったといいます。黒は人気が高く、欧米の一部でも高価、優雅などのイメージがある色です。深い黒に生まれ変わった『S.I.C.』は、プルミエール・ヴィジョンなどの大きな展示会でお披露目することもあり、その黒の深さで現地の人々を魅了しています。日本のみならず、世界最高峰の黒として認知を広めている深黒加工。京都紋付×SHINDOの商品が、アパレルの未来を支えていく。日本の伝統技術のコラボレーションで大きな夢が広がります。

小泉智貴
【株式会社 京都紋付】http://www.kmontsuki.co.jp/about/
1915年創業。京都・壬生(みぶ)の地で、日本の伝統的な正装である黒紋付だけを100余年染め続ける染物屋。 独自の「深黒加工」で黒にこだわり抜く染物屋だからこその視点で、新しい市場開拓に挑み高い評価を得ている。日本が世界に誇る技術を持つ、歴史ある黒染め専業の染物屋。

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