EventJun 14 2019
SHINDOのオリジナルブランド「S.I.C.」は、ハンドクラフトの分野でも多くの方にご愛用いただいています。今回は、京友禅の伝統技法を駆使してオリジナルのファブリックを生み出す『大染工業株式会社』との取り組みについてご紹介。多くのファンを持つ、お菓子のように可愛いファブリック「キキパルフェ」の世界観をリボンに投影したオリジナルプリントリボン製作秘話から、2019年4月に開催された『日本ホビーショー』でのコラボレーションについて語っていただきました。ホビーショーではワークショップ講師を務められた牛木はるかさんと宮下優枝さんにも、ワークショップの様子や作品のこだわりについておうかがいしました。
大染工業株式会社 林 秀憲代表取締役社長(以下、林 秀憲氏):
SHINDOとの関係性は10年近く前から始まり、現在ではS.I.C.に弊社のオリジナル柄をプリントしたリボンを販売するなど、互いの技術を活かした繋がりが太くなっています。
弊社は大正9年に京都にて友禅染めの工場を始め、その後、洋服の服地メーカーとして生産を行なっていました。2010年、イギリスのリバティ ロンドンやフィンランドのマリメッコのように「名前を聞くと柄のイメージが湧くようなファブリックを作りたい」と、オリジナルデザインのファブリックブランド「キキパルフェ」を立ち上げました。
▲京友禅の流れを受け継いだプリント図案のアーカイブ
キキパルフェのデザインは、可憐な小花やスイーツ、ハートやリボン、メリーゴーランドやバレリーナなどをモチーフとしたファンタジックなデザイン。繊細な線画と水彩タッチの淡い色で緻密に描いた甘いお菓子のようなイラストを、京都伝統の捺染技術でプリントしています。
▲40種に及ぶ柄バリエーション
林 秀憲氏:
弊社のオリジナルファブリックのキキパルフェですが、立ち上げ当初、ブランドコンセプトを決める時は頭を悩ませました。その頃、世間では原宿ファッションや日本の「カワイイ文化」が世界へと広がっていた時期でした。日本のカワイイ文化が注目されていた時流に乗るデザインのファブリックをと、様々な角度から科学的にカワイイを研究。そして、カワイイの定義はコレだ!と言える見解に達し、キキパルフェのデザインコンセプトを決定しました。のちにこの時の研究から生まれた考え方やデザインが評価され、日本感性工学会 2016「かわいい感性デザイン賞 優秀賞」を受賞しました。
そのような流れを受け、コンセプトに基づいた独自性のあるデザインを目指し、ファッションだけでなく空間デザインやプロダクトデザインなど多方面で活躍されているデザイナーの水田 祐史氏に協力を依頼。カワイイをロジカルに分析したデザインコンセプトを伝え、テキスタイルデザインとして具現化してもらいました。ポップすぎない色みと、ユニークさをスパイスのように効かせたキュートすぎない図柄。おとなカワイイ雰囲気に仕上がったデザインは想像を超える素敵なものでした。
林 秀憲氏:
「ホビー分野でもS.I.C.の認知度を高めたい」という気運がSHINDO社内で高まっているタイミングで、共同の取り組みが始まりました。キキパルフェのファンを公言してくださる女性スタッフから「キキパルフェ柄のリボンを作りたいです!」と、熱烈なラブコールをいただき、S.I.C.のグログランリボンをベースとしてキキパルフェ柄を製作することに。最高のリボンを作りたいという思いを受け、SHINDOのインクジェットプリントの技術を用いてミリ単位での表現に挑戦しました。
まず第一関門は、ベースのリボン選びです。SHINDOのS.I.C.は種類が豊富なため、異なる種類のリボンで試作。きれいにイラストや色が出るかと予想したつややかなサテン系は、細い線が滲んでしまい世界観の要である緻密さが再現できませんでした。他のいくつかのリボンにもプリントしたものの、トライアンドエラーの繰り返し。最終的にたどり着いたのがグログランリボンです。生地表面に微妙な凹凸がある素材なので「インクが沈むのでは?」と思って敬遠していましたが、どこか懐かしいアンティーク感をまとったキキパルフェらしいリボンになりました。
第二関門は、パターンの配置です。若干の差でも印象が変わるため、最適なバランスを追求。柄の大きさや向きについて何度もパソコン上で見比べ、ベストな配置を模索し、リボンのプロであるSHINDOのデザイナーやプリント担当のスタッフにも協力を仰ぎました。そして、妥協せず取り組みを続けた結果、見事なまでにキキパルフェの世界観をぎゅっと閉じ込めた第一弾のいちご柄のリボンが完成。2016年の日本ホビーショーでデビューを果たし、キキパルフェのファンの方たちにも大好評。それを受けて翌2017年にはキキパルフェの人気柄から全8デザインを展開しました。キキパルフェの生みの親であるデザイナーの水田氏もリボンの仕上がりを見て、大変満足されていましたね。
林 秀憲氏:
毎年4月に開催される『日本ホビーショー』は、世界最大級のハンドメイドの祭典です。ハンドメイド業界を牽引する企業とクリエイターが一堂に会し、道具、素材、サービス、作品を展示。見たり、触れたり、体験したりと、刺激的で魅力的なイベントとして多くの方が日本各地から足を運ばれています。
弊社は2013年から毎年出展しており、キキパルフェのファブリックとS.I.C.のリボンで作るハンドクラフトキットの販売やワークショップを開催しています。今年は「ショートケーキポーチ」と「プチケーキボックス」のキット販売とワークショップを行いました。「楽しい!」「かわいい!」と、手にとってくださるみなさんの笑顔が印象的でうれしかったですね。
これからもお客さまに喜んでいただけるアイテムを生み出すために、SHINDOと共に「カワイイ」の化学反応を楽しめる取り組みを重ねていきたいと思います。
雑誌の取材やイベントなどでキキパルフェのファブリックで作品を作っていた流れから、ワークショップの講師として任命いただきました。今回の「ショートケーキポーチ」は、裁縫が苦手な方でもハンドクラフトの楽しさが芽吹くよう、両面テープで貼るだけで簡単に完成する仕様にしました。参加されたみなさんからも、「工作感覚で楽しい!」と喜びのお声をいただきました。キキパルフェのかわいさが最大限に表現できる柄をセレクトしているので、見ているだけでもウキウキするというお声も。ポイントはケーキの断面感を出すファスナー使いと生クリームに見立てたリボンとレースの使い方。外周にぐるりとフリルのレースを貼るデザインなので、うまくいかなかった部分もかわいらしく隠すことができて一石二鳥のナイスなデザインです(笑)
宮下優枝さん:
キキパルフェで制作した作品を百貨店のポップアップショップなどで販売していただくようになってご縁が深まり、ホビーショーでの講師歴は2回目になりました。今回はフランスの伝統的な厚紙工芸「カルトナージュ」のワークショップを開催。使用するリボンはギャザーを寄せやすくフリル感がきれいに出るよう下準備をしているので、お子さまから親子3世代で一緒に楽しまれる方もいましたね。キキパルフェの生地を貼ったボックスに、ワイヤー入りのリボンや伸縮性のあるレースを使って立体的な装飾を施し、ゴージャス感のあるデザインにしています。「とっても素敵なので、他の柄でも作ってみたい!」というお声も多かったです。もうひとつ作りたい方や、自宅でも作りたいという方にハンドクラフトキットも大好評でした。
大正9年創業 京都の染色工場である大染工業株式会社がはじめたファブリックと雑貨のブランド。可憐な小花やスイーツ、ハートやリボン、メリーゴーランドやバレリーナなどをモチーフにしたファンタジックなイラストのファブリックが大人気。線画と水彩タッチの淡い色で描いたイラストを、京都伝統の捺染技術でプリント。多くのクリエイターの支持を獲得し、幅広い年齢層に愛されている。
フローラデザイナーズスクール専属講師。国内外でフラワーアレンジメントを学び、アーティシャルフラワーデザイナー、プリザーブドフラワーデザイナーとしても活躍、大手企業とのコラボレーションワークショップも開催している。花々の組み合わせによる造形美を極めるなかで磨かれたセンスを生かし、華やかな作品を数多く生み出す。パターンの組み合わせや完成した時の立体感などのバランスが秀逸で、ディテールにまでこだわりが光る。近年はカルトナージュの講師としてもアクティブに活動。
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