ProductsFeb 21 2019
純日本製の腕時計を作りたいとの思いを掲げて歩み出した腕時計メーカー『Knot』は、「ジャパン・クオリティで、日本と世界を結ぶ。」をコンセプトにしたMUSUBUプロジェクトを立ち上げ、日本が誇る優れた素材や高い技術力を持つクラフトマンと共にMade in Japanのリストウェアを作っています。SHINDOはこのプロジェクトの「MUSUBUパートナー」として、2017年の秋冬用から取り組みをはじめ、今回で3回目のコラボレーションが実現しました。株式会社Knot プロダクトデザイナーの松村様に、2018年の秋冬用ベルトとして、高級起毛素材「別珍」を採用された経緯についてお話をお聞きました。
株式会社Knotプロダクトデザイナー/松村様(以下、Knot):
弊社の遠藤が起業した当初からSHINDOさんの技術力の高さは存じ上げていましたので、早い段階から「MUSUBU パートナー」としてご協力いただきたいと思ってました。しかし、創業当初は発注できる数量が少なく、別注でテープを作れる程のロットには達しておりませんでした。このロットの問題をクリアすることができず、コラボレーションが実現しなかったのです。
SHINDO東京支店長 井上(以下、SHINDO):
そうでしたね。ですがSHINDOもKnot様の企業ポリシーや販売モデルに強く共感しておりましたので、再度、弊社からお声をかけさせていただきました。2016年からお取り引きがスタートし、2017年からプロダクトデザイナーの松村さんと出会い、本格的にコラボレーションが始まりました。初めて店頭にSHINDO製のベルトが登場したのは、2017年秋冬からです。
Knot:
秋冬のイメージが出せる素材を探していただくことになり、原宿にあるショールームを訪問させていただいたのですが、サンプルの種類、カラーの多さに圧倒されました!その膨大な量のリボンを目の前にした瞬間、悩みは「いい素材に出会えるか?」ではなく、「この中から選べるのかな?」に変わりましたね。どれも良い素材ばかりでしたので、素材の特徴を知っているプロ目線での提案をお願いしました。
SHINDO:
いくつかイメージに合いそうなものをピックアップしたのですが、せっかくコラボレーションするのであれば、SHINDOの技術力をお見せできるものが良いと思っていました。そういった思いから、高度な職人技の加工が必要で、手間暇はかかるけれど、SHINDOとしても強いこだわりと自信がある特別な素材である別珍(べっちん)をおすすめしました。
Knot:
上品な光沢感による見た目の高級感もさることながら、密度が高く手触りもなめらか。私が知っている別珍とは一線を画していました。手首を飾るリストウェアアイテムとして、手触りの良さも大きなプラス材料でした。季節感のあるファッションウォッチとして、個性を出せる素材に出会えた時の感動は今でも忘れられません。
SHINDO:
別珍は「よこ糸に地糸とパイル糸の2種類を使用したパイル織り」の一種で、ループ状になって織り上がったパイル糸の輪を一本ずつカットして起毛させています。拡大レンズを覗きながら細長い包丁のようなカッターを当て、膨大な量のループをカットしていくのですが、まさに1mmの世界の手仕事です。熟練の腕を持つ職人のなかでも、さらに鍛錬を重ねた限られた数人しか加工できません。
Knot:
私も福井県の工場へうかがった際に、刃先を見ながら辛抱強く作業されていたのを拝見しました。あの作業は神経を研ぎ澄ませないとできない正に職人の技ですね。
SHINDO:
刃を当てる場所がずれてカットが一列飛んでしまうと、前に戻して加工することはできません。戻して再加工すると目面が変わってムラが出てしまう繊細な素材ですので一発勝負。例えば18mmの幅の別珍テープを作るには60列のループをカットします。その58列目が飛んでしまったことに59列目で気付いたら、たとえあと1列で完成だとしても不良品となり、納品できません。労力、時間、素材、全てが水の泡となりますので、最後まで気を抜けないプレッシャーのかかる作業工程です。
Knot:
相当な忍耐力がいる作業ですよね。8時間作業しても30mほどしか加工できないと聞いて、本当に貴重な素材を選ばせていただいたなと感謝しています。
SHINDO:
広幅の別珍生地であれば表面を刈り取るシャーリング加工もできるのですが、機械カッターで無差別に切ると、カット漏れや毛足に微妙な差がでることがあります。どこに出しても誇れるSHINDO品質を維持するためにも、時間はかかるけれど手作業にこだわっています。「ジャパン・クオリティで、日本と世界を結ぶ。」というコンセプトで日本の素晴らしいもの作りを世界へ発信していく。そんな思いを持ったKnot様とのコラボレーションだからこそ、SHINDOが想像していたものより素晴らしいプロダクトが完成しました。
Knot:
そういった日本が誇る職人さんの素晴らしい手仕事や、人知れず重ねる苦労、メーカーとしてのプライドやこだわりを、私たちは真摯なもの作りのストーリーとしてギャラリーショップでお客様へお伝えしています。Knotの腕時計づくりには日本のもの作りの粋が溢れています。だからこそ多くのお客様に選んでいただけているのだと信じています。
SHINDO:
リニューアルして、さらに深みのある色合いに磨きをかけたカラーです。
Knot:
SHINDOさんにトレンド分析した売れ筋カラーをアドバイスいただき、まずはサンプル帳で色を選定。最終的にはショールームで現物を拝見して決めました。定番色としてブラック、ブラウン、ネイビー。そこにクリスマスっぽさもありスタイリングのアクセントになるグリーンと、リボンらしい華やかなボルドーを採用しました。
Knot:
穴を空けてもほつれないのが腕時計のベルトにおいて必須条件ですが、幸い別珍はその点において問題ありませんでした。しかし、ベルトの芯材を入れると厚くなってしまうため、湾曲性を維持しながらも過度に厚さが出ない芯材選びには少し苦労がありました。ですが、良いものに仕上げるための試行錯誤は、苦労よりも楽しみの方が圧倒的に大きかったと思います。
SHINDO:
別珍を巻いた状態は見慣れていましたが、時計のベルトになった姿はとても新鮮で格好良く、感動しました。別珍は角度で陰影が出て表情が変わり、上品さだけでなく面白さもある素材です。Knotさんの店頭で別珍ベルトを見た時に「私が欲しい!」と直感的に思いました。
Knot:
日本の技を集結させて作る時計ですので、いくつもの企業、何人もの職人と意志を同じくして取り組んでいます。それぞれのスペシャリストが、Knotのもの作りを通して繋がっていく事が私たちの願いでもあります。
SHINDO:
「日本製の腕時計を作る」という高い志を持ったKnot様が真ん中にいてくれるますので、協力メーカー同士も自然とつながっていくんだろうなと思います。普段私たちの製品にはSHINDO製だということは一切記載されません。ですがKnot様の別珍ベルトには「SHINDO」の刻印が入っておりますので、社内での反響は大きく、皆大喜びです。メーカーとしての存在感を確立しつつ、培ってきた技術で時計の価値を高め、お客様には「もの作りへのこだわり」を感じてもらえるというのが嬉しいですね。
SHINDO:
異業種の素晴らしい会社に選んで頂いたことは大きな意味があり、可能性の広がりを感じたと同時に自信にもなりました。近年のKnot様の発信力やその影響力の大きさを見ていると、今後も発展されていく企業だと感じています。私たちもそれに負けないようにKnot様の品質にふさわしい素材を提案し、これからもパートナーとして一緒に歩んでいきたいと思います。2019年春夏用のベルトもコラボレーションしていますので、完成するのが楽しみです。
Knot:
日本のもの作りに一途にこだわり続ける「MUSUBUパートナー」の存在があってこそKnotの時計は完成するので、新たなストーリーを語れるSHINDOさんらしい素材を見出していきたいですね。今進めている春夏用ベルトも素敵に仕上がりそうで楽しみです。早くお客様の手にお届けしたいですね!
Knotの腕時計はベルトが付け替えられるので、季節感を出せる素材は人気が高いですね。なめらかな起毛素材はフォーマルな装いにもカジュアルなスタイルにも相性が良く、アクセントになるカラーも好評です。ダークカラーも角度によってつややかな表情が出るので、さりげなく手元をおしゃれに見せてくれますよ。
女性のお客様:
Knotのファッションウォッチは3本持っています。フェイスのデザインがどれもシンプルで洗練された印象なのが好みです。ベルトの付け替えが簡単にできるので、今の季節は洋服に合わせて冬らしい素材のものをセレクトしています。冬のファッションと相性が良く、華やかな赤の別珍ベルトが欲しいかなぁ。
男性のお客様:
時計本体4つ、ベルトは10本以上持っています。シーズンごとに登場するベルトをチェックしに店舗に足を運ぶのが楽しみです。ネクタイやスーツの雰囲気に合わせたいので、出張の際はオリジナルのウォッチケースに入れて持ち歩いています。Made in Japanというのが大きな魅力で、細部まで丁寧な作りに日本のクラフトマンの素晴らしさを感じます。
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豊かな光沢となめらかな手触りを持つ「別珍」ベルトの開発背景に迫る