ProductsOct 12 2018

まだ、どこにも存在しない新素材をつくる

織物の新しい可能性を発信する目的のもと、その志を掲げて繊維資材事業部を立ち上げたのが2013年。服飾副資材のオーダー製造を基盤として歩んできたSHINDOが、繊維分野のボーダーを越えてインダストリアルマテリアル(繊維資材)を製造する事業をスタートさせました。服飾副資材の製造で培ってきた編みや織りの技術には自信があります。とはいえ、新素材開発には私たちが得意な繊維加工技術以外の専門知識も必要になる場面も。今回は繊維資材事業部発足のきっかけから、SHINDOが目指す新しい繊維素材にまつわるストーリーをお話したいと思います。

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きっかけは、繊維と電気のコラボで生まれた光るリボン

SHINDOが新素材開発の取り組みを始めたきっかけは、繊維産業を応援する福井県工業技術センターの実験で試作された、一本の「光るリボン」との出会いでした。有名デザイナーのファッションショーに登場したウエディングドレスの生地に使われていた、LED基盤をつけて光らせたリボン。その斬新さに服飾副資材の製造に関わる私たちも、とても興味深く感じたことを思い出します。しかし、そのLEDリボンは肌に触れると時折ビリッときたり、導線同士が接触して煙が出たりすることもあったようで、安全性や生地との相性など改良すべき点も垣間見えました。

その後、繊維と電気を組み合わせた衣料やテキスタイルの研究会『e-テキスタイル研究会』で、私たちは「服飾副資材として安全に使用できる光るリボン」を製品化することに。設計から開発までに約半年をかけたLED基盤を、はんだ付にも耐えられるガラス繊維と導電糸で織られたリボンに装着させ、更に最適な厚さと柔軟性を持つ絶縁フィルムで挟む事で、安定してリボンと一体化することに成功。安全に使用できる、軽い、柔らかい、水に強いという特長を持つ「SHINDO製の進化した光るリボン」が完成しました。その後プロダクトに成功し、舞台衣装やコマーシャル衣装、夜道を安全に走るためのランニングウエアなどに検討されており、今後益々拡がる可能性を秘めています。

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各分野のスペシャリストと開発を目指す、高付加価値のテキスタイル

年間40~50点。これは実際にアイデアを形にする際の試作品の数です。ここからさらに絞り込まれ、実証実験に進んでいきます。リボン、繊維という自分たちの強みを生かしながら、前述の『e-テキスタイル』などの参加時に出会った異業種のスペシャリストたちとコラボレーションして新素材を共創。LEDや光ファイバー、センサーやマイクロチップなどの微小電気機械システムであるメムスセンシング(MEMS=Micro Electronic Mechanical Systems)を用いたウエアラブルプロダクトやスマートテキスタイルなど、最先端テクノロジーを搭載した新素材の開発・製品化に挑戦しています。

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「新素材開発?そんなに簡単には実現できませんよ」と、聞こえてくる声。そんな後ろ向きな言葉を気にも留めず、製品開発部に所属する職人たちは一歩を踏み出し、ゴールを目指します。そう、いつも私たちは「前進あるのみ」です。開発はいつも自社のみの取り組みではありません。試作した新素材や新たに開発した技術を展示会や専門業界紙で披露することで、一緒にやってみたいと手を上げてくださるメーカーとのつながりができることがあります。別の視点からの新しい発想を加えると、より可能性が拡がることもあり、応用アイデアが枯渇することはありません。オーダー依頼の試作や小ロットの製品化などの対応力と開発から製造までの自社一貫体制を持ってしても決して安易な道ではないですが、リボンメーカーのパイオニアとして「繊維の新しい可能性」に挑み続けることは使命だと感じています。


ファイバー本数が1/35に!開発力と独自性で実現したコストダウン

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新素材を作る上で必要不可欠な試作。新素材のスペック検証を短時間でできること、細巾でテキスタイルを実現できることも、編み、織り、二次加工の技術と自社工場を持つSHINDOの強みです。他社では諸条件が合わず、弊社へ相談に来られた光ファイバーメーカーより「電飾向けの光ファイバーを手編みしているが、製造効率を向上したい」という相談をいただいたことがありました。1mの生地に5000本のファイバーを織り込んだ試作品と同等のスペックを持たせ、低コスト・小ロットで実現させるべく開発がスタート。試行錯誤と試作を繰りかえし、弊社ではおよそ「35分の1」、140本の光ファイバーで製品化することができました。弊社の繊維の経編(たてあみ)技術は、フレキシブルさが求められる服飾やスポーツ素材の分野で高い評価をいただいており、今回のプロジェクトでは『パワーメッシュニット』のノウハウを活かすことができました。複雑な形状でも必要なタイミングで発光させることができるため、フレキシブルな特性を活かして様々な応用が可能です。例えば、ドアが開いたときにだけ通電させて足元を明るく点灯させることも、バッグを開いた時に中を明るく照らすことも、デジタルサイネージに応用することもでき、また、今後進化していくであろうウエアラブル製品への利用にも可能性を秘めています。SHINDOで蓄積された知識や技術力の集結によって生まれた『光ファイバーメッシュニット』そして特許出願されている『光ファイバージャガード』は、繊維の枠を越えた分野の新しいニーズに応えられることを体感した商談でした。


繊維×電気のテクノロジー素材でつくる「未来の普通」

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以前、大学生の皆さんと「未来のウエラブル」をテーマに光ファイバーを用いた製品開発のハッカソンへ参加したことがありました。そこでは10年後のウエアラブルについて語り合い、具体的なアイデアを出し合いました。例えば、装着している人が言葉にしなくても気持ちを可視化して伝え合うことができるもの、自覚症状がなくても心拍数や体温からバイタルサインを発信し、熱中症などの体調の変化にまわりの人が気づくことができるものなど、健康で快適な暮らしに役立つアイデアやユニークな構想があがりました。参加された皆さんの発想力がとても豊かで、弊社スタッフとしても大変良い刺激を受けました。電気だけではできない、繊維だけでも実現しない。けれども異なる分野のインターフェースが組み合わされば、まだ世界に無い新しいものを生み出せるのではないか。そんな確信に近い感情でワクワクしたことを覚えています。

異業種のパートナー企業とのコラボレーションで起こるアイデアの化学反応で、まだ世に存在しないものや、今ある品質以上の産業物を創生し、安心安全・快適便利な暮らしに寄与したい。編みや織りといった伝統的な技法と現代の先進的な技術が融合して、いつか「未来の普通」として実用化される。そんな、5年、10年、20年先の景色を想像し、今日もSHINDOは一歩前に進んでいます。

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