EventAug 06 2021
現代社会のキーワードとして日本国内でも浸透し始めた「SDGs(持続可能な開発目標)」や「サステナビリティ」。これらの課題と向き合い、自ら行動する若者たちがいます。その一人が、地球環境に配慮したファッションストア『miss♡gina』をプロデュースする加藤ジーナさん。企業から集めた廃棄の布や服飾副資材をアップサイクルさせたファッション雑貨の製作販売を行っています。
そんな加藤さんとS.I.C.ショールームがコラボしたアップサイクルイベントを今年の6月に開催。廃棄対象となってしまった『S.I.C.』のリボンなどが、加藤さんや同イベントに参加したブランド『Bow』の片岡沙耶さんたちの手で様々な商品に生まれ変わりました。
染料や糸の廃番等、いくつかの理由で販売できなくなった商品たち。一度、価値を失ったものがクリエイターたちによって息を吹き返すのは、企業としても嬉しいことです。ファッション業界が抱える廃棄問題への取り組みとして加藤さんが始めた『miss♡gina』。その活動に込める思とは? 加藤さんにお話を伺いました。
Bayazid Akter / Shutterstock.com
ーーなぜ、このアップサイクルの取り組みをしようと思ったのでしょうか?
輸入ファッションのお店として『miss♡gina』を始めた頃、英語教師の仕事もしていて。教材の中に、ファッションのサステナビリティをテーマにした記事があったんです。その記事で、ファッション業界の環境問題や倫理的な問題を知りました。一番ショックを受けたのが、バングラデシュの縫製工場崩壊事故で若い女性が多く亡くなっていることでした。
ーー2013年に起きた「ラナ・プラザの悲劇」と呼ばれる事件ですね。ファッション業界の在り方を問い直すきっかけとなった衝撃的な出来事でした。
記事を読んでファッションの仕事をしている自分も、この問題に何か取り組まなきゃいけないと強く思って。それから、お店の商品を輸入から自分で作る方向へ変えていきました。
▲「『S.I.C.』のリボンを使うまでは、ハギレを縫ってリボンの代用品としていました」(加藤さん)
ーー実際にアップサイクルの取り組みを始めて感じたことを教えてください。
最初はアップサイクルの素材集めがすごく難しかったです。企業と繋がるまでにかなり時間がかかってしまい、この取り組み自体が大変なのかもしれないと思いました。やっと見つけた企業から廃材を買い取らせていただいても、使える素材は限られているので、廃材だけでは作れなくて。廃材を使うために廃材でないものの購入、消費が必要になってくる。
けれど、それは環境に負荷をかける行為でもあるわけです。そうなると、廃材と廃材ではないものを使って商品を作っていることをどう説明するのか。環境にいいと言えるのか。今もずっと考えている難しい問題です。
ーー加藤さん自身、ものづくりはお好きですか?
それが実は好きじゃないんです、作ること(笑)。多分、本当は作ることが好きですけど、仕事にしているのでちょっと大変だなと思います。自分の"好き"が、お客さんと一致するとは限らないですから。
でも、自分の好きなデザインを見てもらうより、環境に優しいファッションや、ファッションを通じて環境問題を考えてもらう方が重要なので。自分のやりたいことをみんなの好きな方向へ寄せてでも、環境問題について知ってもらうきっかけになればと思います。
▲イベント会場には『miss♡gina』のデザイン担当、富田志帆さんが作ったペールブルーの部屋着(写真左)も展示された。サイズ調整のひもは『S.I.C』.の廃棄予定リボンを使用。
ーーS.I.C.ショールームスタッフとの出会いを教えてください。
今年の3月末、ラフォーレ原宿で『miss♡gina』のPOP UP STOREと『whooose』というお店の古着販売イベントをやっていたのですが、偶然そこへS.I.C.ショールームスタッフの方が通りかかりくださって。すぐにS.I.C.ショールームへ連れて行ってもらいました。
その時、廃棄される『S.I.C.』リボンのサンプルを持ち帰らせてもらって、そのままイベント会場の片隅でマスクストラップを作って展示しました。オーダーを受けて、お客さんの目の前でマスクストラップを作ることもありました。突然の出会いから始まったご縁に、とても感謝しています。
ーーこれまでリボンを使って商品を作ることはあったのでしょうか?
リボンは大好きで、商品の装飾に使っていました。ただ、廃材としてリボンを買い取らせてもらうことって本当に少ないので...廃棄予定の『S.I.C.』リボンが使えたのはすごく嬉しかったです。
廃棄予定であっても、『S.I.C.』のリボンは種類が多く、これまで見たことのない形のものもあって、びっくり!かわいいものを見ると頭が活性化する!じゃないですけど(笑)、思いつくままに商品が作れました。いろんな刺激をもらったと思います。
▲つけるだけで顔まわりを優しく華やかにしてくれる、マスクストラップ。
ーー廃棄予定の『S.I.C.』リボンを使ったアップサイクル商品について教えてください。
『S.I.C.』のかわいいリボンで作ったマスクストラップは、今回のイベントで一番反応が良かったですね。ご時世もありますけど、マスクストラップはファッションとして簡単に取り入れられる商品なので、手に取ってもらいやすかったのかなと。
▲小型化できるマイバッグ。ハートの形に見えるリボンとブランドロゴの組み合わせがかわいい。
あと、今回初めて小さくなるマイバッグを作りました。バッグの持ち手(肩かけ)部分などに『S.I.C.』のリボンを使っています。お客さんからも便利でいいね!と気に入ってもらえました。
▲『S.I.C.』のリボンを使用したネックストラップ。バリエーション豊か。
今回のイベントのために新しく作ったのが、マイバッグとネックストラップです。この二つは『miss♡gina』を一緒に運営しているデザイナーの富田さんと100個くらい意見を出し合って決めました。
ーー富田さんと意見を交換しながら、商品作りをされているのですね?
富田さんとはかなり話します。服のデザインをコンセプトから考えると、1ヶ月くらいかかることもありますね。彼女は中学の同級生なんです。ずっと仲は良かったんですけど高校と大学は別。去年行ったプロジェクトで、初めて彼女と一緒に仕事をして、現在も『miss♡gina』を手伝ってもらっています。
ーー商品づくりで大事にしていることは何ですか?
かわいさやデザインの良さを大切にしながら、環境に配慮した商品でもあること。環境に配慮されていると言われなければ分からない。そういうアップサイクル商品を作っていきたいです。
けれど、納期に合わせて毎日商品を作り続けていたら、きっとストレスになると思うので。デザインが頭に浮かんだ時に作って、欲しい人がいたら買ってもらう。自分のペースで進められる、今の規模感が丁度いいなって感じます。
ーー感性を活かし、自分らしいペースで若い世代に喜んでもらえるアップサイクル商品を作る。これは企業にはできない、素晴らしい方法だと思います。今回コラボレーションできて本当に良かったです。
ありがとうございます。私は一からデザインして作るより、手元にあるもので作ってくださいと言われる方が嬉しい。輸入ファッションのお店をしていた頃も、適当に買った素材を見てデザインを描いて服などを作っていました。
ーーまさにアップサイクル向きですね!
そうですね。今回のイベントテーマ"リボンを使う"のように、制限の中でデザインしたり、限られた素材をどう活かせるか考えて作るほうが得意なんだと思います。
ーー今回のイベントを通じて感じたことを教えてください。
これまではアップサイクルという言葉をあまり使っていなかったんです。少し大げさな言葉だと感じていたので。でも今回のイベントで、アップサイクルは手軽で身近なものだと感じてもらいたい。そう感じてもらえることがしたいと思うようになりました。
ーー今後、SHINDOとしても、捨てられてしまう商品の価値をクリエイティブの力などでアップさせる、人に喜ばれる方向へ商品を変えていく"アップサイクル"という形で、様々な取り組みをしていけたらと考えています。
ーー今後の目標や夢などを教えてください。
まず、サステイナブルファッションには色々な方法があると発信していきたいです。サステイナブル素材のオーガニックコットンを使った製品って買うと高いですよね。そのせいか、サステイナブルファッションはお金持ちで意識の高い人のファッションと思われがち。でも、古着を着たり、自分でアップサイクルするのも、サステイナブルファッション。サステイナブルファッションには様々なスタイルがあることを広めていきたい。
ただし、同じことをしていても出会う人の数は変わらないと思っているので、どんどん新しいことをやっていきたいです。アップサイクルの仕方を教える参加型イベントとか。
どんな取り組みも、"我慢せずにやりたいことをして、環境にも配慮していく"のが大事。自分らしく楽しみながら、環境についてみんなで取り組んでいけたらと思っています。衣食住は捨てられないもの。その中でいかに自分のやりたいことをやりつつ、環境のことを考えるのか。これじゃなきゃダメ!ではなくて、色々な提案をしていきたいです。
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