EventMar 31 2020

フランス発、服飾の名門校「エスモード・ジャポン」の卒業コレクションをレポート

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世界13カ国に展開するフランス発祥のファッションスクール「エスモード」。その東京校で今年2月に卒業コレクションが開催されました。全学生さんたちが全身全霊を注いで創り上げた作品は、どれも素晴らしくて見応えのあるものばかり。残念ながらその全てはご紹介しきれないので、そのうちの4名の学生さんの作品にスポット当て、お話を伺いました。当日のコレクションの様子も合わせてお楽しみください。

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▲左から、古田麻友さん、平尾里奈さん、本野あんなさん、石井彩音さん


古田麻友さん

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--卒業作品のテーマとなぜそのテーマで作品作りをしようと思ったのかを教えてください

テーマは「hand-me-down」。日本語でおさがりという意味です。おさがりの服は、何人もの手に渡ってすごく大事に着られています。一方、お店には大量の服が並び、売れなくなったものは過剰在庫となり廃棄。安価な服はワンシーズン着て終わりなど、服を長く大切に着ようという意識がなくなっているように感じます。私は、春からデザイナーになるので、長く着てもらえる服を作りたいという思いをこめてこのテーマにしました。

--作品作りで特にこだわったポイントは何ですか?

小さい女の子が大人のシャツ(おさがり)を着ているという作品なのですが、大きいシャツをなんとか自分の体に合わせようと、子どもながらに工夫している様子をどう表現するかにこだわりました。たくさんの赤いリボンは、床につくほど長いシャツの丈を、部屋中からかき集めてきたひもで結んでたくし上げているところを表しています。なので、あえて同じリボンで統一するのではなく、5種類のリボンを使いました。また、少女性のアイコンとして赤を取り入れたので、その色味にもこだわりました。赤いシャツはイメージにぴったりくるものがなかったので、自分で染めました。

--作品では『S.I.C.』をどのように使いましたか?

作品のアイコンともいえる赤いリボンは、すべてSHINDOさんのS.I.C.を使わせて頂きました。ショールームには、赤だけで何種類ものリボンがあって、さらに赤の色調のバリエーションも豊富だったので、イメージ通りの赤に出会うことができました! 制作した4作品で6種類の赤いリボンが登場しています。

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平尾里奈さん

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--卒業作品のテーマと、なぜそのテーマで作品作りをしようと思ったのかを教えてください

テーマは「オリンピック(和×スポーツ)」です。最初からスポーツウエアを作ろうと考えてはいましたが、そこに何か別のエッセンスを加えたいという思いがありました。今年は日本でオリンピックが開催されますし、やはり、日本=和とオリンピックしかないなと。

--作品作りで特にこだわったポイントは何ですか?

ポイントはスポーツと和の比率を5:5にしたことです。今回の4作品は、左から忍者・着物・侍・歌舞伎をテーマにしているのですが、製作にあたっては、日本の伝統衣装についてかなり勉強しました。特に気に入っている作品「着物」では、十二単からイメージしたレイヤードや着物スリーブ、帯をデザインに取り入れているのですが、和のテイストを強く出し過ぎないように注力しました。スポーツウエアなので、動きやすさはもちろん、撥水素材を使うなど、機能面にもこだわっています。

--作品では『S.I.C.』をどのように使いましたか?

「着物」では、グログランリボンを襟元や袖口、ウエストなどに使っています。単なる見た目の装飾ではなく、袖口やウエストを絞ってサイズやシルエットの調整ができる機能も兼ねています。グログランリボン以外にも、ファスナーや切替部分のアクセントとしてパイピングにしたり、フードのドローコードとしても使わせて頂きました。
「忍者」ではウエスト部分に7.5cmのゴムベルトを使っているのですが、ショールームでこれを見つけた時は、思わず感動しました! ここまで太いゴムベルトは他では手に入らないのでとてもありがたかったです。

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本野あんなさん

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--卒業作品のテーマとなぜそのテーマで作品作りをしようと思ったのかを教えてください

テーマは「彩りと、すこしの刺激をくれる服」です。以前からネオンアートに興味があり、注目しているアーティストの作品からインスピレーションを受けて決めました。その方の作品は、空間使いや遠近感、また直線・曲線の絡ませ方がとても美しいんです。線の絡まり方やまっすぐではなくゆがんでいる感じが自分の服作りと重なったのも理由です。

--作品作りで特にこだわったポイントは何ですか?

ラインの使い方や絡ませ方と、素材にこだわりました。ネオンだからといって安易にLEDを使うのは避けたかったので、反射効果のある紐、オーロラの入ったクリアな紐を採用。結果、暗闇で光をあてると反射材がLEDよりも強い光を放ってくれました。

--作品では『S.I.C.』をどのように使いましたか?

編み地の全部分に入れてある反射材のほか、オーロラなど約8割にSHINDOさんの素材を、残りの2割にオリジナルで手がけた紐を使いました。それら数種類の異なる紐やテープを編み、メッシュ生地に通すことで一枚の布状にして、パンツやワンピースなどを製作しました。

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石井彩音さん

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--卒業作品のテーマとなぜそのテーマで作品作りをしようと思ったのかを教えてください

テーマは「夢の住人」です。子供服に興味があるのと、私自身も子供っぽい服が好きなので、童心に帰るような服を作ろうと思いました。それをコレクションに落とし込もうとした際に浮かんだ「夢」というキーワードをもとに、コアラと女の子が夢の中に登場しているところをイメージしました。

--作品作りで特にこだわったポイントは何ですか?

「夢」の世界観をどう表現するかと、どれだけ手作業で自分らしさを伝えられるかにこだわりました。おふとんに埋もれた、朝の起きたくないシーンをボリューム感で描き、そこに全て手作業でコアラのキルティングを施しました。コアラをあえてシルエットにしてリアリティをなくしたのもポイントです。

--作品では『S.I.C.』をどのように使いましたか?

ゴムで脱ぎ着ができるようにしたかったので、背中の部分にS.I.C.のストレッチテープを使わせていただきました。このストレッチテープは伸びがいいだけでなく、表はサテン風だけど裏がもこもこふわふわした感じなんです。それが気に入り、あえて裏を表にして使っています。

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ついに迎えた卒業コレクションでは、審査結果の発表も

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2020年2月6日(木)恵比寿ザ・ガーデンホールにて行われた卒業コレクション。テーマは、これから起きるであろうすべての「出来事(promesseプロメス)」の起源。誕生は創造の「第一歩(prémiceプレミス)」。そして、コンセプトは「生(ショウ)」。「生」とは、「新世代のクリエイターの誕生」と3年間の集大成であるファッション「ショー」という2つの瞬間を掛け合わせた言葉で、学生さんたちによって生み出されたのだそう。来場者数は約800名、作品数175ルックという大規模なショーに多くの来場者からは「さすがエスモード!」と賞賛の声が上がっていました。

そして、気になる受賞結果は...

優秀作品賞 古田麻友さん
特別賞 平尾里奈さん
岡山デニム賞 古田麻友さん

なんと古田さんがW受賞! コレクションを終えた4名の学生さんは「長い期間をかけて1つのコレクションを作り上げていくのは大変でしたが、そのぶん終わった後の達成感が凄かったです」(古田さん)。「つまずき続け泣いての繰り返しでしたが、自分と向き合える機会を与えられ、最終的には思い通りの作品が作れました」(平尾さん)。「最後に華々しいイベントを体験でき、良い経験になりました。どんなに辛くなっても途中で投げ出げださずに製作を成し遂げられたことが、これからの自分の糧になると思います」(本野さん)。「チームのメンバーとともに、より良いコレクションを作り上げることへのやりがいや達成感を強く感じられた時間でした」(石井さん)。
ショーを見届けた先生は「学生たちは、ファッション業界に先駆的かつ実験的なクリエーションの新しい風を起こすというメッセージをたずさえ、想像の枠を超えた新しさを追い続けるファッションという世界の新しい輪郭を再定義し、描き、形作るという作業を繰り返しています。今、これらの新しいデザイナーの誕生によって、そして彼らの作り上げるクリエーションを通して、すべてのしがらみから解放されて生まれ変わった、そして時代の先端を預言する前衛的な『ファッション』の物語が立ち上がるのです」と学生さんたちのハレの門出を心から喜んでいらっしいました。

 

エスモード・ジャポン
■エスモードジャポン
instagram

https://www.instagram.com/p/B8qVeESIID3/

世界13ヵ国20校で展開しているファッション教育機関。
グループ校内では伝統あるパリ校の教育メソッドを共有・実施し、170余年の今もファッション教育を開発・発展させています。

・FRANCE パリ校:http://www.esmod.com/en/
・JAPON 東京校:https://www.esmodjapon.co.jp/

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